のぼりの話。

観光地というには少しさびしい場所に、「おみやげ」「ひものや」「おちゃあります」と並んでいた。
ほんとうなら、工夫した言葉を入れたのぼりのほうが良いのだろうに、「ひものや」と堂々と描かれてしまって、思わずその店に入ってしまった。
中には、ほんとうに「ひもの」しかおいていない。
奥に生簀があった気がするが、それも定かではない。
なにせそこは「ひものや」なのだ。
海に真近い場所だった。波打ち際からの海風なのか、干物のにおいなのかわからなくなってくる。
嗅覚に飛び込んでくる潮のにおいが、店主のエプロンからも感ぜられる。
堂々と、絶対的に自分に自信を持っている店主。置いてある干物に自信を持っている店。
その店主に、「ひものや」だけ書かれたのれんは、よく似合った。